ラベンダーの精油やアブソリュートは世界中で生産されているが、Tapestry Maple Valleyがグラースのドミニク・ロワイエ農園のものにこだわる理由は、香りの方向性というより、原料の「読みやすさ」にある。同じ農園の同じ品種でも、収穫年によって微妙に変わる。その変化を毎年確認しながら調香を調整できるのが、直接取引の利点だ。
アブソリュートと精油の違い ¶
ラベンダーの精油は水蒸気蒸留で得られるが、アブソリュートは溶剤抽出で得られる。アブソリュートの方が花の香りに近く、ワックス状の成分も含むため、香りの持続性が高い。調香においては、トップノートに精油、ミドルからベースにかけてアブソリュートを使うことが多い。Tapestry Maple Valleyでは「Vallée Verte」のミドルノートにアブソリュートを使っている。
収穫年による違いをどう扱うか ¶
2023年のロワイエ農園のラベンダーアブソリュートは、前年より樟脳感が強かった。乾燥した夏が続いたためだとPierreから聞いた。その年のバッチでは、ラベンダーの使用量を通常より一割減らし、ミントの比率を上げて調整した。こうした微調整の記録はすべてノートに残しており、次のバッチの参考にする。
有機認証への移行と今後の見通し ¶
ロワイエ農園は現在、一部の畑で有機認証の取得を進めている。認証取得後は農薬不使用が正式に保証されるため、Tapestry Maple Valleyとしては歓迎している。ただし認証取得のコストが原料価格に反映される可能性があり、製品価格への影響も検討中だ。変更が生じる場合は事前にお知らせする。
産地の違いが調香に与える影響 ¶
ブルガリア産やプロヴァンス産のラベンダーと比較すると、グラース産は全体的に甘さが控えめで、ハーブ感が前に出る。これがマプルバレーのダグラスファー精油と組み合わせたときに、余計な甘さを加えずに済む理由だとEliseは考えている。甘さが必要なときはチュベローズで補う。役割分担が明確な方が、調香は整理しやすい。
原料の産地と農家を知ることは、調香の精度を上げるためでもあるが、それ以上に「何を使っているか」を正直に話せるようにするためだ。Tapestry Maple Valleyの製品説明に産地を記載しているのは、そういう理由からだ。